街並みを考える
みなさんおはこんばんにちは
木楽舎代表の安東です
私が事務所を不在にしていたときに
とある方がこんな本を
届けてくださいました
届けてくださったのは
先日お引き渡しをしたご家族の
お父様です
この方について書き出すと
感謝の言葉が止まらなくなるので
この場では伏せます(笑)
パラパラッとめくる限り
世界中の町なみについて
たくさんの事例を交えて
深い考察が交わされている様子で
読みごたえ十分な印象
読み終えた際には
レビューのブログを書くかもしれないし
書かないかもしれません(笑)
が
街並みというテーマは
建築に携わる私たちにとって
密接にかかわる内容です
こちらの本は私が設計する時の
バイブルの一つで
建築家・田中敏溥(としひろ)さん著の
「向こう三軒両隣り」
道路も舗装されておらず
家々が通りに開いていて
その地域に暮らす住人同士が
自然に関わり合いを持っていた
昭和の街並みから
草木を敵視するように
土地をコンクリートで覆い
防犯の名の下に
堅牢な門や扉によって
外と内を完全に断絶し
お隣さんの素性さえ分からない
令和の街並みへ
時代が変わったからと言えば
それまでかもしれませんが
それではやっぱり寂しいし
そんな環境で育つ子供たちは
将来どうなってしまうんだろう・・・
そんな問題提起をしている本です
私も元が教職ということもあってか
田中さんの考え方には
共感することが多くあります
道端ですれ違う小学生に
こんにちはとあいさつをするものの
まるで私のことが見えていないかのように
素通りしていくことがほとんど
ときどき木楽舎にかかってくる
若い方からの営業電話では
あいさつもそこそこに
「我が社の商品はですね・・・!」
とすぐに本題に入ろうとしたり
初めて話す相手に対して
言葉遣いが友達レベルだったり・・・
「おたがいさま」
とか
「相手を慮る」
という概念が薄れているような
虚しさを感じることが増えました
特に今の社会に暮らす子どもたちは
①家族
②学校
③ネット
という3つの世界軸で
生きていると言われます
やっぱりこれだけでは
多様なコミュニケーションの鍛錬には
少し不十分で
ここにほんの少しだけ
「ご近所さん」という世界を
ブレンドしてあげると
身の安全をある程度は確保しつつ
多様な他者とのやり取りを経験する
貴重な機会となるはずです
そういう思想を示すために
住まいづくりというのは
強力な方法になり得ます
ただ、カッコよく
口ばっかりではいけないので・・・
今年から新たに
オンラインの設計塾に
参加しています
6人の講師陣は
目の玉が飛び出すような
錚々たる面々
実はその内のお一人が
「向こう三軒両隣」の田中敏溥さんなのです
ここぞとばかりに
張り切って課題を提出しました
閑静な住宅街の斜面に面した角地に
ご夫婦、お子さん2人、そして親の
計5~6人が暮らすという設定です
敷地を簡単にCGにすると
敷地の南と東が開放的で
西側には緑地帯もあるという
とても恵まれた立地だと分かります
ここで一番気を付けたのが
歩道を歩くご近所さんが
イヤな気持ちにならないようにする
ということです
元々なにも建っていなかった
気持ちのいい広場なので
お散歩中の方の心を癒す風景が
広がっていたはず
だからこそ
風景を断絶するような巨大な建物や
これ見よがしに豪華な見た目の建物は
ふさわしくないだろうと感じました
ということで
歩道から視線が抜ける場所は
穏やかな平屋になるように
そして南北の窓を開放すると
向こうの風景が少し見えるようにと
配置を考え抜きました
ただ、あまりスッポンポンだと
暮らすハードルが上がるので
土や石でできたような塀と
木々で柔らかに目隠しをしています
この考え方はおおむね
田中さんにもOKをもらえて
胸をなでおろしています
設計というのは奥深くて
設計者が10人いれば
見事に10通りのプランが生まれるという
無限大の世界ですが
その一人ひとりが
「街並みにやさしく」という意識で
設計に取り組んでいけば
きっと日本のご近所づきあいも
変わっていくものだと思います
来週の完成見学会も
そんな意識で設計したお家です↓
まだまだ余裕があるので
ぜひご予約ください